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夏だから怪談 その1

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それは寝入りばなのことなのか、
それとも、もう眠ってしまっていたのか…。
 
パシっと何かが空気を震わせたあと、ズンと腹部が重くなった。
大気を圧縮して固めたか、水中にでもいるかのように
腕、足、胸、首の、何もかもが重苦しい。
体中が布団に沈み込んでいくような、奇妙な圧迫感が襲ってくる。
同時にぶわっと広がるように辺りを包む「恐怖感」。

首から下をねぶるような、この得体の知れない、イヤな感覚が始まると、
たいてい「それ」はやってくる。
いわゆる、金縛りだ。

十代の多感な時期。その頃の私は、”とある案件”に関わってしまったせいで、
よくこんな体験をしていた。



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なんか息苦しい…。
そう思った途端のこと。

ねっとりとした何ともいえない異様な感覚に襲われ、私の体はセメントで全身を塗り固めたみたいに、指一本動かせなくなってしまった。
何とか体を動かそうと頑張るが、ぴくりとも反応しない。

目は開けない。絶対に開けない。
怖くて怖くて、必死で体中に力を込めた。
次いで、頭の中に大音響で鳴り響く、金属音。
階段の手すりを力いっぱい鉄パイプで殴りつけるようなその音は、カンカンカンと甲高い音をたて、一定のリズムで響き続ける。
この恐怖は何度体験しても慣れない。
 


すると突然、ものすごい勢いで体を揺さぶられた。
現実の肉体に起こっているのではないだろうが、シェイクするみたいに上下に激しく、がくがくと揺れる感覚がする。

私は布団の中でパニックに襲われながら、思いつく限りかたっぱしから神仏に祈った。
気休め程度のお経の断片を(ちゃんとしたの知らないので…)無我夢中で唱える。
たいていの場合は、しばらくすればおさまる。
気力・根性で解けることもある。

何年か経って、自力で解けると覚えてからは、金縛りが起こる前兆の段階で、回避することも出来るようになった。
けれどこの頃は、どうしていいかわからず、ただ翻弄され、嵐が過ぎ去るのを待つしかなかったのだ。


時たま激しい揺れの勢いで、体からポンと意識が外に出されてしまうこともある。
峠を急カーブで曲がる自動車から、勢いよく放り出されてしまったような感覚、といえばわかるだろうか。
そのまま幽体離脱のように、周囲の景色が見えて、自分を見下ろせればしめたものだ。
恐怖も何もかも消え去るから。

大抵は、真っ暗闇の穴に引っ張られた。
体から引きずり出されて、何も見えない闇の底に落下していく自分だけを感じる。
そして危ういところで目が覚めることもあれば、誰かが後ろから抱きかかえて、落下する私を抱き止めてくれることもあった。
おぼれた人間を抱えて水面にむかって泳ぐように、白い羽根を持ったその人は、上に向かっていつもまっすぐ浮かび上がってくれた。
私はその存在を知っているような気もするし、知らない気もする。

ある時は、手首に巻いた”お守り”に助けられたこともあった。
体は宙に浮いているのに、片方の手首だけが布団に貼り付いて、足から引きずり出されそうになる私をつなぎ止めてくれた。
それは、護符でもなんでもない、なんの変哲もないただのアクセサリーだった。
友人が「あなたに似合いそうだったから」と贈ってくれた、デパートの雑貨店に売られている、ただのネックレスだ。
なぜか分からないけれど、それは、私にとって”お守り”だった。


もちろん、その日も身につけて寝た。
なのにどういうわけか、この日は違っていた。

何をやってもおさまらない。
どう止めたらいいかも分からない。
ジェットコースタか、ミキサーの中に放り込まれたような、激しい衝撃がたて続けに襲ってくる。
台風とか暴風雨の中で立ちつづけたら、ひょっとしてあんな感覚だろうか?

呼吸もままならず、全身をなぶられるような不快さに必死で耐えた。
あるはずは無いが、そのときは本気で窒息するのではないかとさえ思った。
相変わらず鳴り止まない金属音。
頭が割れそうなほどうるさい。

手首に巻いたはずのお守りはなんの反応も見せず。
ついに私の意識が、ポンと体から放り出されてしまった。

景色は見えない。
闇。どこまでも落ちていく闇。

ああ、こっちのパターンだ。

でも大丈夫。”いつもの人”が引っ張り挙げてくれる。落ちきる前に、助けてくれる。
落ちきらなければ、大丈夫なのだから。


………。

なんでそう思ったのかわからない。
無意識に感じ取ったのか。それともふと好奇心のように魔が差したのか。
とにかく私は思ってしまった。


「誰もいない」


助け手がいない私の体は、底知れぬ闇を、どこまでも落ちていった。



 
 
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拍手お返事ですー。

●izmさま

理由がわかると安心しますよね。
左右の間違いや、同じ数字入れ替わり、地味に不便ですよね。周りにも迷惑かけちゃうことあるし…。
なんとか治せればよいのですけれど。
もし何か良い方法見つかったら、シェアしますねー^^

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Posted by  tsgmi on 03.2014 幻想現実譚   0 comments   0 trackback


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Author: tsgmi
はぐれ魔女。
あるいは、矛盾の錬金術師。
本業は編集デザイン。
たまに、ないると名乗ります。

ときにカード鑑定してみたり、天然石やハーブをつかって妖しげな術をしてみたり。
たいていワタシのほうが右往左往しています。何か手助けが必要な際は、遠慮無くお声がけを。

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